ノブレスオブリージュ 今後も救世主たらんことを 《九州大化編①》
「木村クン、最近ちゃんと勉強しとっと?」
「いや、2コマ目の自習で少し寝かけたww」
「うわぁヤンチーや。大志寮は寝てると部屋に追い返されるらしいで」
「そいつはいいや。ちょうど寝不足だしw睡眠時間増えてラッキー」
とある土曜日の昼下がり
高校の同級生は今頃何をしているだろう
天気が良ければ外に遊びに行ってるかもしれない
遊びに行ってなかったとしても優雅な午後のひと時を楽しんでいたりするにちがいない
雲ひとつない九州の青空を窓越しに眺めながら、木村は夏期講習のテキストの予習をしている体でそんなことを考えていた
ちょうど、授業と授業の間の10分間休憩
予備校生にとってはほんの一瞬の憩いの時間である
季節は夏で、二日後から夏期講習の授業が始まるという日だった
自習室を見渡すと、二日後の講習会スタートに備え、皆思い思いにテキストを広げ
雀の涙ほどの休憩時間に浸っていた
友人のAさんから丸源ビルという廃墟ビルの存在を教えてもらったのはそんな時である
「木村クンさ、丸源ビルって知ってる?」
「丸源?何それ」
「バブル時期に不動産系の仕事で大富豪になったナントカ源ナントカっていうおじさんがいてさ、その人が所有していた雑多ビルが小倉にいっぱいあるんだよ」
小倉とは
/p> 福岡県北九州市にある地名である
元は炭鉱の街として栄え
海に近いため風邪が冷たい
頬に十字傷があるような人が街を放浪し (殺さざるべからずの誓いを立ててるに違いない
大通りを一本はいろうものなら
「お兄ちゃん、おっ◯触っていきーや」とスーツ姿のお兄さんに囲まれる
そんな楽しい街である
そんな軍仕様の防弾チョッキを警察が着て歩いてるような街に
怪しい雑多ビルがいくつかあったところで、別に大したことじゃない
そう、思っていた
次の日、朝の強制自主(矛盾してる時間だと今でも思う)を終え、友達と街へ出ると
そこには今までとは違った小倉の街が広がっていた
今までただのボロ雑多ビルだと思っていた建物のほとんどに◯源のマークが付いているのである
さすがにビビった
そして何故か都市伝説の動画をYouTubeで見終わった後のような妙な恐怖感に襲われた
よくよく建物を見てみると
marugen31とか書いてある
ってことは、少なくても31個のビルを1人のおじさんが所有していることになる
大富豪のやることは違うなぁ
小倉だけではなく、東京にも同じように何個ものビルを展開しているというのだから驚きだ
その溢れんばかりのお金で、アフリカの貧困層に巨大医療複合施設を建設してくれればいいのに
そう思ったのは自分だけではないと思う
しかし、一つ一つの建物に番号が振ってあると知ると
1番から順に記録に撮ってみたいと思うのが人間というものである(…違うかな
しかし、当時の僕らには携帯の所有は許されず
支給された授業の復習用タブレットは、カメラ機能がロックされていたため、記録に残すのは断念せざるを得なかった
「この街に何個の源ビルがあるか分からないんだ…」
そうAさんは言っていた
今年の生徒さんの中にも源ビルめぐりしてる人はいたりするのかな…
みんなそんな暇じゃないかw
ちなみにこの所有者は1000億円以上の資産がありながら、数億の脱税で国税に摘発されたそうな
持てるものの義務というのは、どの世界でもあると思うんですけどね
ま、そんな人なら
僕に新車のインプレッサをガリガリ君感覚で奢ってくれたりしてくれそうだけどね…
あー
車欲しい