君が望む永遠
ねぇ、私のことどうおもってるの?
私は……べつにあなたのこと嫌いじゃないけど……
ライオンズマンションの一室
ニトリで購入され部屋に搬入されたばっかりのソファーの上で、僕は友人がディスプレイの向こうにいる二次元の女の子への愛の告白を選択する後ろ姿を眺めていた
二十歳前とはいえ、19の男が青の髪の中学生相手に
しかも四択のセリフの中から告白のフレーズを選んでいるなんて
親が知ったら泣いて喜びそうだな
そう声をかけると、友人は顔を一ミリも動かさずに言った
「いいんだよ。俺は自己微分しているだけだから。俺という三次元の存在を微分することで二次元で定義し、この子と画面の中で生活していくから……あと彼女は中学生じゃなくて高校生な」
とても東日本で最高偏差値の学部にいる学生の言葉とは思えないが、突っ込むのも面倒なので、僕はポテチをむさぼりながらケータイをポケットから取り出した
受信Box5件
メールが来ていた
特に考えずに開いてみると
「今日一風堂いかない?」 から始まるラーメン行こうぜメールが立て続けに5件来ていた
とりあえず返信を打たず、目の前で女の子からの告白の返事待ちの医学生にこの旨を伝えた
すると、友人は依然として僕に目もくれず「 行ってこいよ」と言った
客人のお帰りに一瞥もくれないとは、ひどいホストである
よっこらせ、あー振られねーかなw
そう言いながら僕は玄関に向かって歩き出した
すると、銀色の自分のスニーカーに右足を入れようとした瞬間に居間にいる彼の声が聞こえた
「おれの元カノ、交通事故で入院したんだ…」
えっ..……
思わず聞き返す
「1年位前かな…俺が少し寄り道して待ち合わせ場所に行ったらさ…その場所に人だかりができてたのさ。あー有名人でもいたのかなぁって思って近づくとさ…救急車が停まってやがんの…変な胸騒ぎがして人ごみかき分けたらさ…」
僕は片足だけ靴に足を突っ込んだまま、呆然と耳を傾けていた
「しばらく入院してたよ。命に別状ががなくて本当に良かった…でもそのとき、俺、遅刻したんだ…どうでもいい理由で道草してさ…」
「もし…あの時、時間通りに待ち合わせ場所に俺がついていれば…なんてな」
メールを確認すると、この場所から一風堂までは少し時間がかかりそうだ
急に切迫感が胸を締め付ける
僕はモウレツな勢いでチャリをこいだ
アーケードを抜け、駅の下を通り、マジで急いで現場に向かった
ほどなくして店の前についた
相手はまだ………いない
反射的に携帯を取り出して開いた
すると…
返信を打っていなかった
故に約束が成立してないことに気付いた
後にメールが二件届いた
「急にごめんねwまた今度いこ!」
「あ、さっきの話、前やったゲームの子な。タイトルは・・・k(ry」
その日のラーメンは少ししょっぱかったような気がした